廣々した湖のやうな此入江を横ぎる舟は僕等の小舟ばかり。
徳二郎は平時の朗かな聲に引きかへ此夜は小聲で唄ひながら靜かに櫓を漕いで居る。
潮の退た時は沼とも思はるゝ入江が高潮と月の光とでまるで樣子が變り、僕には平時見慣れた泥臭い入江のやうな氣がしなかつた。
廣々した湖のやうな此入江を横ぎる舟は僕等の小舟ばかり。
徳二郎は平時の朗かな聲に引きかへ此夜は小聲で唄ひながら靜かに櫓を漕いで居る。
潮の退た時は沼とも思はるゝ入江が高潮と月の光とでまるで樣子が變り、僕には平時見慣れた泥臭い入江のやうな氣がしなかつた。