腹が空て來ると、手を伸して手の屆く處に實て居る無花果か芭蕉の實を捩つて食ふ、若し起上つて捩らなければならぬなら飢餓て死だかも知れないが、幸にして一人では食ひきれぬ程の實が房々と實つて居るので其憂もなく、熟過た實がぼて/\と地に落ちて蟻の餌となり、小鳥の群は枝から枝を飛び廻つて思ひのまゝ木實を啄んでも叱り手がないといふ次第であつた。
先づ斯ういふ風な處からラクダルの怠惰屋は國内一般の評判ものとなり、人々は何時この漢を仙人の一人にして了ひ、女は此庄園の傍を通る時など被面衣の下でコソ/\と噂してゆく、男の中には脱帽して通るものすらあつた。
けれど小供こそ眞の審判官で、小供の眼にはたゞ變物の一人としか見えない。