『イヤ全たく貴君の物で御座ます、けれども何卒か枉て私に賜りたう御座ます』
『それで事は解つた、室を見なさい、石は在るから。
言はれて内室に入つて見ると成程石は何時の間にか紫檀の臺に還つて居たので益々畏敬の念を高め、恭しく老叟を仰ぎ見ると、老叟『天下の寶といふものは總てこれを愛惜するものに與へるのが當然じや、此石も自ら能く其主人を選んだので拙者も喜しく思ふ、然し此石の出やうが少し早すぎる、出やうが早いと魔劫が未だ除れないから何時かはこれを持て居るものに禍するものじや、一先拙者が持歸つて三年經て後貴君に差上げることに仕たいものぢや、それとも今これを此處に留め置ば貴君の三年の壽命を縮るが可か、それでも今直ぐに欲う御座るかな。