其言葉の一々を雲飛は心に銘し、やゝ氣を取直して時節の來るのを待て居た。
そこで彼の權官は首尾よく天下の名石を奪ひ得てこれを案頭に置て日々眺めて居たけれども、噂に聞きし靈妙の働は少しも見せず、雲の湧などいふ不思議を示さないので、何時しか石のことは打忘れ、室の片隅に放擲して置いた。
其翌年になり權官は或罪を以て職を剥れて了い、尋で死亡したので、僕が竊かに石を偸み出して賣りに出たのが恰も八月二日の朝であつた。
其言葉の一々を雲飛は心に銘し、やゝ氣を取直して時節の來るのを待て居た。
そこで彼の權官は首尾よく天下の名石を奪ひ得てこれを案頭に置て日々眺めて居たけれども、噂に聞きし靈妙の働は少しも見せず、雲の湧などいふ不思議を示さないので、何時しか石のことは打忘れ、室の片隅に放擲して置いた。
其翌年になり權官は或罪を以て職を剥れて了い、尋で死亡したので、僕が竊かに石を偸み出して賣りに出たのが恰も八月二日の朝であつた。