余の入つた室は余一人であつた。
人独り居るは好ましきことに非ず、余は他の室に乗換へんかとも思つたが、思い止まつて雨と霧との為めに薄暗くなつて居る室の片隅に身を寄せて、暮近くなつた空の雲の去来や輪をなして回転し去る林の立木を茫然と眺めて居た。
斯る時、人は往々無念無想の裡に入るものである。
余の入つた室は余一人であつた。
人独り居るは好ましきことに非ず、余は他の室に乗換へんかとも思つたが、思い止まつて雨と霧との為めに薄暗くなつて居る室の片隅に身を寄せて、暮近くなつた空の雲の去来や輪をなして回転し去る林の立木を茫然と眺めて居た。
斯る時、人は往々無念無想の裡に入るものである。