童の心は伊豆の火の方にのみ馳せて、この声を聞くものなかりき。
帰らずや、帰らずやと二声三声、引続きて聞こえけるに、一人の幼なき児、聞きつけて、母呼びたまえり、もはやうち捨て帰らんといい、たちまちかなたに走りゆけば、残りの童らまた、さなり、さなりと叫びつ、競うて砂山に駈けのぼりぬ。
火の燃えつかざるを口惜く思い、かの年かさなる童のみは、後振りかえりつつ馳せゆきけるが、砂山の頂に立ちて、まさにかなたに走り下らんとする時、今ひとたび振向きぬ。
童の心は伊豆の火の方にのみ馳せて、この声を聞くものなかりき。
帰らずや、帰らずやと二声三声、引続きて聞こえけるに、一人の幼なき児、聞きつけて、母呼びたまえり、もはやうち捨て帰らんといい、たちまちかなたに走りゆけば、残りの童らまた、さなり、さなりと叫びつ、競うて砂山に駈けのぼりぬ。
火の燃えつかざるを口惜く思い、かの年かさなる童のみは、後振りかえりつつ馳せゆきけるが、砂山の頂に立ちて、まさにかなたに走り下らんとする時、今ひとたび振向きぬ。