僕は養子とならぬ以前から此人柄に気をつけて居ましたが、里子と結婚して高橋の家に寝起することとなりて間もなく、妙なことを発見したのです。
それは夜の九時頃になると、養母は其居間に籠って了い、不動明王を一心不乱に拝むことで、口に何ごとか念じつゝ床の間にかけた火炎の像の前に礼拝して十時となり十一時となり、時には夜半過に及ぶのです、居間の中、沈欝いで居た晩は殊にこれが激しいようでした。
僕も始めは黙って居ましたが、余り妙なので或日このことを里子に訊ねると、里子は手を振って声を潜め、『黙って居らっしゃいよ。