身を切るような風吹きて霙降る夜の、まだ宵ながら餅屋ではいつもよりも早く閉めて、幸衛門は酒一口飲めぬ身の慰藉なく堅い男ゆえ炬燵へ潜って寝そべるほどの楽もせず火鉢を控えて厳然と座り、煙草を吹かしながらしきりに首をひねるは句を案ずるなりけり。
『猿も小簔をほしげなりというのは今夜のような晩だな。
『そうね』とお絹が応えしままだれも対手にせず、叔母もお常も針仕事に余念なし。
身を切るような風吹きて霙降る夜の、まだ宵ながら餅屋ではいつもよりも早く閉めて、幸衛門は酒一口飲めぬ身の慰藉なく堅い男ゆえ炬燵へ潜って寝そべるほどの楽もせず火鉢を控えて厳然と座り、煙草を吹かしながらしきりに首をひねるは句を案ずるなりけり。
『猿も小簔をほしげなりというのは今夜のような晩だな。
『そうね』とお絹が応えしままだれも対手にせず、叔母もお常も針仕事に余念なし。