待てど二郎十蔵ともに出で来たらず、口々に宮本宮本、十蔵早く出でよと叫べども答えすらなし、人々は顔と顔と見合して愕き怪しみ、わが手を握りし岡村の手は振るいぬ。
この時わが胸を衝きて起こりし恐ろしき想いはとても貴嬢の解したまわぬ境なり、またいかでわが筆よくこれを貴嬢に伝え得んや。
試みに想い候え、十蔵とは奸なる妻のために片目を失いし十蔵なり、妻なく子なく兄弟なく言葉少なく気重く心怪しき十蔵なり。
待てど二郎十蔵ともに出で来たらず、口々に宮本宮本、十蔵早く出でよと叫べども答えすらなし、人々は顔と顔と見合して愕き怪しみ、わが手を握りし岡村の手は振るいぬ。
この時わが胸を衝きて起こりし恐ろしき想いはとても貴嬢の解したまわぬ境なり、またいかでわが筆よくこれを貴嬢に伝え得んや。
試みに想い候え、十蔵とは奸なる妻のために片目を失いし十蔵なり、妻なく子なく兄弟なく言葉少なく気重く心怪しき十蔵なり。