二郎がこの言葉はきわめて短くこの挙動ははなはだ単純なれど、その深き意はたやすく貴嬢の知り得ざるところなり。
なんじはげにわが友なりと二郎はわが手を堅く握りて言えり、その声はふるいぬ。
われこの時二郎に向かって、よししからばわが言うをきけ、人は到底陸の動物なり、かつなんじはわれらと共になすべき業を有すと言い放つを願わざりしにはあらねど、されど二郎ほどの男、わが言葉によりて感憤するほどの不覚をなさじ、かれ必ずかれの志あり、海を懼れず陸を懼れずなさんと欲するところをなすはこの若者なるをわれ知れば、ただしばしそのなすところに任さんのみと思いてやみぬ。