豊吉はわれ知らずその後について、じっと少年の後ろ影を見ながらゆく、その距離は数十歩である、実は三十年の歳月であった。
豊吉は昔のわれを目の前にありありと見た。
少年と犬との影が突然消えたと思うと、その曲がり角のすぐ上の古木、昔のままのその枝ぶり、蝉のとまりどころまでが昔そのままなる――豊吉は『なるほど、今の児はあそこへ行くのだな』とうれしそうに笑ッて梅の樹を見上げて、そして角を曲がった。
豊吉はわれ知らずその後について、じっと少年の後ろ影を見ながらゆく、その距離は数十歩である、実は三十年の歳月であった。
豊吉は昔のわれを目の前にありありと見た。
少年と犬との影が突然消えたと思うと、その曲がり角のすぐ上の古木、昔のままのその枝ぶり、蝉のとまりどころまでが昔そのままなる――豊吉は『なるほど、今の児はあそこへ行くのだな』とうれしそうに笑ッて梅の樹を見上げて、そして角を曲がった。