夢に天津乙女の額に紅の星戴けるが現われて、言葉なく打ち招くままに誘われて丘にのぼれば、乙女は寄りそいて私語くよう、君は恋を望みたもうか、はた自由を願いたもうかと問うに、自由の血は恋、恋の翼は自由なれば、われその一を欠く事を願わずと答う、乙女ほほえみつ、さればまず君に見するものありと遠く西の空を指し、よく眼定めて見たまえと言いすてていずこともなく消え失せたり。
詩人はこの夢を思い起こすや、跳ね起きて東雲の空ようやく白きに、独り家を出で丘に登りぬ。
西の空うち見やれば二つの小さき星、ひくく地にたれて薄き光を放てり、しばらくして東の空金色に染まり、かの星の光自から消えて、地平線の上に現われし連山の影黛のごとく峰々に戴く雪の色は夢よりも淡し、詩人が心は恍惚の境に鎔け、その目には涙あふれぬ。