例の椀大のブリキ製の杯、というよりか常は汁椀に使用されているやつで、グイグイあおりながら、ある者は月琴を取り出して俗歌の曲を唄いかつ弾き、ある者は四竹でアメリカマーチの調子に浮かれ、ある者は悲壮な声を張り上げてロングサインを歌っている、中にはろれつの回らぬ舌で管を巻いている者もある、それぞれ五人十人とそこここに割拠して勝手に大気焔を吐いていた。
自分の入って来たのを見て、いきなり一人の水兵が水雷長万歳と叫ぶと、そこらにいた者一斉に立って自分を取り巻き、かの大杯を指しつけた。
自分はその一二を受けながら、シナの水兵は今時分定めて旅順や威海衛で大へこみにへこんでいるだろう、一つ彼奴らの万歳を祝してやろうではないかと言うとそれはおもしろいと、チャン万歳チャンチャン万歳など思い思いに叫ぶ、その意気は彼らの眼中すでに旅順口威海衛なしである。