「ついてはご自身で返事書きたき由仰せられ候まま御枕もとへ筆墨の用意いたし候ところ永々のご病気ゆえ気のみはあせりたまえどもお手が利き候わず情けなき事よと御嘆きありせめては代筆せよと仰せられ候間お言葉どおりを一々に書き取り申し候
必ず必ず未練のことあるべからず候
母が身ももはやながくはあるまじく今日明日を定め難き命に候えば今申すことをば今生の遺言とも心得て深く心にきざみ置かれたく候そなたが父は順逆の道を誤りたまいて前原が一味に加わり候ものから今だにわれらさえ肩身の狭き心地いたし候この度こそそなたは父にも兄にもかわりて大君の御為国の為勇ましく戦い、命に代えて父の罪を償いわが祖先の名を高め候わんことを返すがえすも頼み上げ候