月末なるべしと青年は答え、さればこの地もまたいつ帰り来て見んことの定め難く、また再び見ることかなうまじきやこれまた計り難ければ、今日は半日この辺りを歩みて一年と五月の間、わが慰めとなり、わが友となり、わが筆を教え、わが情を養いし林や流れや小鳥にまでも別れを告げばやとかくは装衣ちぬ、されど翁にはひとまず父の家に帰りて万事の仕度を終えし後、また来たりておもむろに別れを述べんと言いつつ青年は身を起こして庭に立ち、軽く礼して立ち去らんとす。
翁はただ微笑むのみ、何の言葉もなく青年を打ちまもりつ。
青年の出で行きし後、翁は庭の中をかなたこなたと歩み、めでたしめでたしと繰り返して独言ちしが、ふと足を止め、眼を閉じ、ややありて、されど哀れの君よと深き嘆息をもらしぬ。