青年は身を起こしてしばし林の中をたどりしが、直ちに路にはいでず、路に近けれど人目に隠るる流れの傍らにいでたり。
こはかれが家の庭を流れてかの街を貫くものとは異なり、遠き大川より引きし水道の類ゆえ、幅は三尺に足らねど深ければ水層多く、林を貫く辺りは一直線に走りて薄暗きかなたより現われまた薄暗き林の木陰に隠れ去るなり。
村の者が野菜洗うためにとてこの流れの幅をことさらに広く掘り、小さき入り江をなせる、いつもかれが好みて訪い来るところにいで落ち葉を敷きつ、茅、野ばら、小笹の類入り乱れし藪叢を背にしてうずくまり、前には流れの音もなく走るをながめたり。