村の者が野菜洗うためにとてこの流れの幅をことさらに広く掘り、小さき入り江をなせる、いつもかれが好みて訪い来るところにいで落ち葉を敷きつ、茅、野ばら、小笹の類入り乱れし藪叢を背にしてうずくまり、前には流れの音もなく走るをながめたり。
熱沙限りなきサハラを旅する隊商も時々は甘き泉わき緑の木陰涼しきオーシスに行きあいて堪え難き渇きと死ぬばかりなる疲労を癒する由あれど、人生まれ落ちての旅路にはただ一度、恋ちょう真清水をくみ得てしばしは永久の天を夢むといえども、この夢はさめやすくさむれば、またそのさびしき行程にのぼらざるを得ず、かくて小暗き墓の門に達するまで、ついに再び第二のオーシスに行きあうことなく、ただ空しく地平線下に沈みうせぬるかの真清水を懐うのみ、げにしかり、しかしてわれ今、しいて自らこのオーシスに分かれんとす、しいて自らこの夢を破らんとす。
これまことにわれの堪え得べき事なるか。