この時東の空、雲すこしく綻びて梢の間より薄き日の光、青年の顔に落ちぬ、青年は夢に舟を浮かべて清き流れを下りつつあり、時はまさに春の半ばなり。
左右の岸は新緑の光に輝き、仰げば梢と梢との間には大空澄みて蒼く高く、林の奥は日の光届きかねたれど、木の間木の間よりもるる光はさまざまの花を染め出だし、涼しき風の枝より枝にわたるごとに青き光と黒き影は幾千万となき珠玉の入り乱れたらんごとく、岸に近き桜よりは幾千の胡蝶一時に梢を放れ、高く飛び、低く舞う。
流れの淀むところは陰暗く、岩を回れば光景瞬間に変じ、河幅急に広まりぬ。