「今日彼時から往ったら親方が厭な顔をしてこの多忙しい中を何で遅く来ると小言を言ったから、実はこれこれだって木戸の一件を話すと、そんな事は手前の勝手だって言やアがる、糞忌々しいからそれからグングン仕事に掛って二時過ぎになるとお茶飯が出たが、俺は見向も仕ないんだ。
お女中が来て今日はお美味い海苔巻だから早やく来て食べろと言ったが当頭俺は往かないで仕事を仕続けてやったのだ。
そんなこんなで前借のこと親方に言い出すのは全く厭だったけど、言わないじゃおられんから帰りがけに五円貸してくれろと言うと、へん仕事は怠けて前借か、俺も手前の図々しいのには敵わんよ、そらこれで可かろうって二円出して与こしたのだ。