浜は昼間の賑わいに引きかえて、月の景色の妙なるにもかかわらず人出少し。
自分は小川の海に注ぐ汀に立って波に砕くる白銀の光を眺めていると、どこからともなく尺八の音が微かに聞えたので、あたりを見廻わすと、笛の音は西の方、ほど近いところ、漁船の多く曳き上げてあるあたりから起るのである。
近づいて見ると、はたして一艘の小舟の水際より四五間も曳き上げてあるをその周囲を取り巻いて、ある者は舷に腰かけ、ある者は砂上にうずくまり、ある者は立ちなど、十人あまりの男女が集まっている、そのうちに一人の男が舷に倚って尺八を吹いているのである。