今思うと、私が十七八の時分ひとが尺八を吹くのを聞いて、心をむしられるような気がしましたが、今私が九つや十の子供の時を想い出して堪らなくなるのとちょうど同じ心持でございます。
父には五つの歳に別れまして、母と祖母との手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、山茶花もあり百日紅もあり、黄金色の茘枝の実が袖垣に下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
家と屋敷ばかり広うても貧乏士族で実は喰うにも困る中を母が手内職で、子供心にはなんの苦労もなく日を送っていたのでございます。
今思うと、私が十七八の時分ひとが尺八を吹くのを聞いて、心をむしられるような気がしましたが、今私が九つや十の子供の時を想い出して堪らなくなるのとちょうど同じ心持でございます。
父には五つの歳に別れまして、母と祖母との手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、山茶花もあり百日紅もあり、黄金色の茘枝の実が袖垣に下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
家と屋敷ばかり広うても貧乏士族で実は喰うにも困る中を母が手内職で、子供心にはなんの苦労もなく日を送っていたのでございます。