父には五つの歳に別れまして、母と祖母との手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、山茶花もあり百日紅もあり、黄金色の茘枝の実が袖垣に下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
家と屋敷ばかり広うても貧乏士族で実は喰うにも困る中を母が手内職で、子供心にはなんの苦労もなく日を送っていたのでございます。
母も心細いので山家の里に時々帰えるのが何よりの楽しみ、朝早く起きて、淋しい士族屋敷の杉垣ばかり並んだ中をとぼとぼと歩るきだす時の心持はなんとも言えませんでした。
父には五つの歳に別れまして、母と祖母との手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、山茶花もあり百日紅もあり、黄金色の茘枝の実が袖垣に下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
家と屋敷ばかり広うても貧乏士族で実は喰うにも困る中を母が手内職で、子供心にはなんの苦労もなく日を送っていたのでございます。
母も心細いので山家の里に時々帰えるのが何よりの楽しみ、朝早く起きて、淋しい士族屋敷の杉垣ばかり並んだ中をとぼとぼと歩るきだす時の心持はなんとも言えませんでした。