一度は一人残っていると強情を張りましたので、母だけ先に帰りましたが、私は日の暮れかかりに縁先に立っていますと、叔母の家は山に拠って高く築きあげてありますから山里の暮れゆくのが見下されるのです。
西の空は夕日の余光が水のように冴えて、山々は薄墨の色にぼけ、蒼い煙が谷や森の裾に浮いています、なんだかうら悲しくなりました。
寺の鐘までがいつもとは違うように聞え、その長く曳く音が谷々を渡って遠く消えてゆくのを聞きましたら、急に母が恋しくなって、なぜ一しょに帰らなかったろう、今時分は家に着いて祖母さんと何か話してござるだろうなど思いますと堪らなくなって叔母にこれからすぐ帰えると云いだしました。