外面如菩薩内心如夜叉などいう文句は耳にたこのできるほど聞かされまして、なんでも若い女と見たら鬼か蛇のように思うがよい、親切らしいことを女が言うのは皆な欺ますので、うかとその口に乗ろうものならすぐ大難に罹りますぞよというのが母の口癖でありましたのでございます。
私は母を信仰していましたから母の言うことは少しも疑いませんでした。
それですからおさよも事によったら内心如夜叉ではないかとこわがりながらも、自分で言いわけをこしらえて、おさよさんはまだ子供だし自分もまだ子供だからそんなこわいことはない、おさよさんが自分を可愛がるのは真実に可愛がるので決して欺すのじゃあないとこういう風に考えていたのでございます。