銀之助は静と結婚する積りであつたけれど教育が無いとか身分が卑しいとかいふ非難が親族や朋友の間に起り、且つ其純潔すら疑がはれたので遂に何時とはなしに銀之助の方から別れて了つたのであつた。
別れて今の妻と結婚して後は静の成行に就き銀之助は全く知らなかつた。
ところが五年目に突然此手紙、何事かと驚いて読み下すと其意味は――お別れしてから種々の運命に遇た末今は或男と夫婦同様になつて居る、然るに貴様との関係と同じく矢張男の家で結婚を許さない、その為め男は遂に家出して今は愛宕町何丁目何番地小川方に二人して日蔭者の生活をして居る。