ところが五年目に突然此手紙、何事かと驚いて読み下すと其意味は――お別れしてから種々の運命に遇た末今は或男と夫婦同様になつて居る、然るに貴様との関係と同じく矢張男の家で結婚を許さない、その為め男は遂に家出して今は愛宕町何丁目何番地小川方に二人して日蔭者の生活をして居る。
窮迫に窮迫を重ね、ちび/\した借金も積りて今は何としても立行かぬ様となつた。
そこで如何なることがあつても貴様にはと誓つて居たけれど其誓も捨て義理も忘れてお願ひ申すのである、何卒二十円だけ用意して明晩来て呉れまいか――といふのである。