細川繁は風邪を引いていたので四五日先生を訪うことが出来なかったが熱も去ったので或夜七時頃から出かけて行た。
家内が珍らしくも寂然としているので細川は少し不審に思いつつ坐敷に通ると、先生の居間の次ぎの間に梅子が一人裁縫をしていた。
細川が入って来ても頭を上げないので、愈々訝かしく能く見ると蒼ざめた頬に涙が流れているのが洋燈の光にありありと解る。
細川繁は風邪を引いていたので四五日先生を訪うことが出来なかったが熱も去ったので或夜七時頃から出かけて行た。
家内が珍らしくも寂然としているので細川は少し不審に思いつつ坐敷に通ると、先生の居間の次ぎの間に梅子が一人裁縫をしていた。
細川が入って来ても頭を上げないので、愈々訝かしく能く見ると蒼ざめた頬に涙が流れているのが洋燈の光にありありと解る。