其所で疳は益々起る、自暴にはなる、酒量は急に増す、気は益々狂う、真に言うも気の毒な浅ましい有様となられたのである、と拙者は信ずる。
現に拙者が貴所の希望に就き先生を訪うた日などは、先生の梅子嬢を罵る大声が門の外まで聞えた位で、拙者は機会悪しと見、直に引返えしたが、倉蔵の話に依ればその頃先生はあの秘蔵子なるあの温順なる梅子嬢をすら頭ごなしに叱飛していたとのことである、以て先生の様子を想像したまわば貴所も意外の感あることと思う。
拙者ばかりでなくこういう風であるから無論富岡を訪ねる者は滅多になかった、ただ一人、御存知の細川繁氏のみは殆ど毎晩のように訪ねて怒鳴られながらも慰めていたらしい。