其崩が七八名、京橋區彌左衞門町の同好倶樂部に落合つたことがある。
小介川文學士が伴ふて來た一人の男を除いては皆な此倶樂部の會員で、其の一人はオックスホード大學の出身、其一人はハーバード大學の出身など、皆なそれ/″\の肩書を持て居る年少氣鋭、前途有望といふ連中ばかり。
卓を圍んでてんでに吐き出す氣焔の猛烈なるは言ふまでもないことで、政論あり、人物評あり、經濟策あり、時に神學の議論まで現はれて一しきりはシガーの煙を熢々濛々たる中に六七の人面が隱見出沒して、甲走つた肉聲の幾種が一高一低、縱横に入り亂れ、これに伴ふ音樂はドスンと卓を打つ音、ゴト/\と床を蹶る音、そして折り/\冬の街を吹き荒す北風の窓ガラスを掠める響である。