僕は先生と對座して四方山の物語をして居ながら、熟々思ひました、世に美はしき生活があるならば、先生の生活の如きは實にそれであると、先生の言論には英雄の意氣の充て居ながら先生の生活は一見平凡極るものでした。
先生を訪ふた、翌日でした、使者が手紙を持て來て今から生徒十數名を連れて遠足にゆくが君も仲間に加はらんかといふ誘引です。
僕は直ぐ支度して先生の宅に駈けつけました、それが朝の六時、山野を歩き散らして歸つて來たのが夕の六時でした、先生は夏期休業と雖も常に生徒に近き、生徒の爲めに時間を送つて居らるゝのです。