あまり遅くならないうちに帰らなければならぬと思って、窓ぎわを離れてから振り向くと、高い、青い時計台には流るるような月光がさしています。
そして町を離れて、野原の細道をたどる時分にはまた、彼のよい音色が、いろいろの物音の間をくぐり抜けてくるように、遠く町の方から聞こえてきました。
その翌日から、さよ子は二階の欄干に出て、このよい音色に耳を傾けたときには、ああやはりいまごろは、あの青い時計台の下で、あの親孝行の娘らが、ああして、ピアノを鳴らしたり、歌をうたったり、マンドリンを弾いたりして、年老った父親を慰めているのだろうと思いました。