そして、それだけ夢を見ているような、うっとりした気持ちにさせたのであります。
二人はあの怖ろしいあらしの夜を怒濤にもまれて、真っ暗な中を漂っていたこと、また、夜が明けると、青い、青い、はてしもない海の上を、幾日も、幾日も漂っていたこと、そしてそのあげくに、見も知りもしない船に救われたこと、そして、いま、このどことも知らない港について、陸に上がって砂原にうずくまって、日の光を浴びているということすら、このときは頭の中に思い出さずに、ただ、うっとりとあたりの景色に見とれていたのでありました。
あたりを往来する人々は、この二人のいるそばに近寄って、珍しそうにながめて、笑ってすぐにゆくものもあれば、また、しばらくは立ち止まってゆくものもありました。