二人はあの怖ろしいあらしの夜を怒濤にもまれて、真っ暗な中を漂っていたこと、また、夜が明けると、青い、青い、はてしもない海の上を、幾日も、幾日も漂っていたこと、そしてそのあげくに、見も知りもしない船に救われたこと、そして、いま、このどことも知らない港について、陸に上がって砂原にうずくまって、日の光を浴びているということすら、このときは頭の中に思い出さずに、ただ、うっとりとあたりの景色に見とれていたのでありました。
あたりを往来する人々は、この二人のいるそばに近寄って、珍しそうにながめて、笑ってすぐにゆくものもあれば、また、しばらくは立ち止まってゆくものもありました。
人間だということだけは同じであるが、色も、姿もなにひとつ同じものはなく、そして、言葉すらまったく通じなかったので、たがいに顔を見合わしながら、心のうちでは不思議なものを見るものだというくらいに思ったのであります。