顫へながら飛び込んだ客は寒がりである。
子規と來て、ぜんざいと京都を同じものと思つたのはもう十五六年の昔になる。
夏の夜の月圓きに乘じて、清水の堂を徘徊して、明かならぬ夜の色をゆかしきものゝ樣に、遠く眼を微茫の底に放つて、幾點の紅燈に夢の如く柔かなる空想を縱まゝに醉はしめたるは、制服の釦を眞鍮と知りつゝも、黄金と強ひたる時代である。
顫へながら飛び込んだ客は寒がりである。
子規と來て、ぜんざいと京都を同じものと思つたのはもう十五六年の昔になる。
夏の夜の月圓きに乘じて、清水の堂を徘徊して、明かならぬ夜の色をゆかしきものゝ樣に、遠く眼を微茫の底に放つて、幾點の紅燈に夢の如く柔かなる空想を縱まゝに醉はしめたるは、制服の釦を眞鍮と知りつゝも、黄金と強ひたる時代である。