眞夜中頃に、枕頭の違棚に据ゑてある、四角の紫檀製の枠に嵌め込まれた十八世紀の置時計が、チーンと銀椀を象牙の箸で打つ樣な音を立てゝ鳴つた。
夢のうちに此の響を聞いて、はつと眼を醒ましたら、時計はとくに鳴り已んだが、頭のなかはまだ鳴つてゐる。
しかも其の鳴りかたが、次第に細く、次第に遠く、次第に濃かに、耳から、耳の奧へ、耳の奧から、腦のなかへ、腦のなかから、心の底へ浸み渡つて、心の底から、心のつながる所で、しかも心の尾いて行く事の出來ぬ、遐かなる國へ拔け出して行く樣に思はれた。
眞夜中頃に、枕頭の違棚に据ゑてある、四角の紫檀製の枠に嵌め込まれた十八世紀の置時計が、チーンと銀椀を象牙の箸で打つ樣な音を立てゝ鳴つた。
夢のうちに此の響を聞いて、はつと眼を醒ましたら、時計はとくに鳴り已んだが、頭のなかはまだ鳴つてゐる。
しかも其の鳴りかたが、次第に細く、次第に遠く、次第に濃かに、耳から、耳の奧へ、耳の奧から、腦のなかへ、腦のなかから、心の底へ浸み渡つて、心の底から、心のつながる所で、しかも心の尾いて行く事の出來ぬ、遐かなる國へ拔け出して行く樣に思はれた。