街頭へ身をさらし、雪まじりの風の吹く中で、バイオリンを弾き、悲痛の唄をうたって、道ゆく人の足を止めようとしました。
けれど畢竟自分を慰め、苦痛を忘れさせるものには酒以外ないことを知ったが、生まれた日から、今日まで、瞬時も休まず鼓動をつづける心臓に触れて、愕然として、彼は、真に自身をあわれむ気が起こったのでした。
ほんとうに、ブルジョアに隷属する彼らが、よどんだ沼の中につながれた材木であり、縛ったなわもろとも、いつか腐る運命にあるなら、彼は、さながら激流の彼方の岸、此方の岩角と衝突しながら、漂いいくいかだのごときもので、時代の犠牲たることに異いがなかったのです。