そうして、別に厭な顔もせず、一口の不平も零さず、不規則に酒を飲んだり、物を食ったり、女を相手にしたり、していながら、何時見ても疲れた態もなく、噪ぐ気色もなく、物外に平然として、年々肥満してくる技倆に敬服している。
誠吾が待合へ這入ったり、料理茶屋へ上ったり、晩餐に出たり、午餐に呼ばれたり、倶楽部に行ったり、新橋に人を送ったり、横浜に人を迎えたり、大磯へ御機嫌伺いに行ったり、朝から晩まで多勢の集まる所へ顔を出して、得意にも見えなければ、失意にも思われない様子は、こう云う生活に慣れ抜いて、海月が海に漂いながら、塩水を辛く感じ得ない様なものだろうと代助は考えている。
其所が代助には難有い。