胸の右につけられた、燦然として輝く戦傷徽章は、その戦功と名誉をあらわすものであると同時に、これを見る健全の人々は、この国家のために傷ついた勇士をいたわれという、温かい心のこもる貴いものでありました。
どこへいくときにも、身につけよと、上官からいわれたのであるが、何事にも内気で、遠慮勝ちな清作さんは、同じ軍隊におって朝晩辛苦をともにした仲間で、死んだものもあれば、また、いまも前線にあって戦いつつある戦友のことを考えると、自分は武運つたなくして帰還しながら、なんで、これしきの戦傷を名誉として人に誇ることができようか、しかも戦争はなおつづけられているのだ。
自分には、すこしもそんな気持ちがなくても、この徽章をつけていれば、あるいは人々にそうとられはしないかというとりこし苦労から、なるたけ外へ出るときにもこれをつけぬようにしていました。