自分の踏んだ草が、自然に刎ね返って、延び上った姿、青い葉の裏に、青い円い体に銀光の斑点の付いている裸虫の止っているのも啼く虫と見えて、ぎょっとしたこと、其の時の小さな心臓の鼓動、かゝる空溝に生えている草叢にすら特有の臭い、其等は、今、こうやって机に向っていると、まざ/\として目に見え、鼻に来る覚えがする。
けれど、平常ペンを採っていて、この色、この臭いを今考える程強く書いたことはなかった。
また、かゝる日に自己の興を求めて殺生した事実について考えさせられたこともなかった。
自分の踏んだ草が、自然に刎ね返って、延び上った姿、青い葉の裏に、青い円い体に銀光の斑点の付いている裸虫の止っているのも啼く虫と見えて、ぎょっとしたこと、其の時の小さな心臓の鼓動、かゝる空溝に生えている草叢にすら特有の臭い、其等は、今、こうやって机に向っていると、まざ/\として目に見え、鼻に来る覚えがする。
けれど、平常ペンを採っていて、この色、この臭いを今考える程強く書いたことはなかった。
また、かゝる日に自己の興を求めて殺生した事実について考えさせられたこともなかった。