吾々の此の日常生活というものに対して些の疑をも挾まず、有ゆる感覚、有ゆる思想を働かして自我の充実を求めて行く生活、そして何を見、何に触れるにしても直ちに其の物から出来るだけの経験と感覚とを得て生活の充実をはかる、此れが即ち人間のなすべき事であり、又人生であると解する。
そして此の心を持って自然を見主観に映じた色彩、主観に入った自然の姿、此れが即ち人間生活の絶対的経験という立場から凡ての刺戟を受け入れて日常生活の経験を豊富にするという、それが為めの努力、此れが人生を楽しむ努力であると思う。
併し、如上の事だけに満足が出来なく、自己の存在を明にする唯一の意識、即ち感覚そのものに疑を挾む事も出来得るのである。