表題だけを見る時、「あゝこういう本が読みたかったのだ」と、興奮に近いものを感じながら、早速これを求めることがある。
よく、こうした例は、屡々青年時代にあったことで、丸善の店頭などで、日頃名をきいている欧米の作家や、批判家の最新の著書を見出すと、これを読めば、明日からでも、自分の見識が変るような気がして、それでなくてさえ、何をか常に追うている時代であったら、金がなかった時には、本箱の本を売っても、新書を求めたものでした。
本の包みを抱いて帰る道すがら、また、その二三日というものは、強い味方が自分に付いているような気がしたが、たま/\友達のところへ遊びに行って、同じ本を机の上にながめた時、いまゝでの興奮はどこへやら消えてしまったのでした。