「切れない、はさみだなあ。
と、太郎さんが、かんしゃくを起こして畳の上へ投げ出しても、はさみは自分の切れないのをよく知っていましたから、がまんをして、あきらめていたのであります。
そしてこのごろは、げたの鼻緒を立てたり、つめを切ったりするときだけにしか使われなかったけれど、年とったはさみは、若いころ、お嬢さんが人形の着物をつくるときに、美しい千代紙や、折り紙を切ったり、また、お母さんが、お仕事をなさるときに使われた、いくつかの華やかな思い出を目に浮かべて、せめてものなぐさめとしていたのでした。
「切れない、はさみだなあ。
と、太郎さんが、かんしゃくを起こして畳の上へ投げ出しても、はさみは自分の切れないのをよく知っていましたから、がまんをして、あきらめていたのであります。
そしてこのごろは、げたの鼻緒を立てたり、つめを切ったりするときだけにしか使われなかったけれど、年とったはさみは、若いころ、お嬢さんが人形の着物をつくるときに、美しい千代紙や、折り紙を切ったり、また、お母さんが、お仕事をなさるときに使われた、いくつかの華やかな思い出を目に浮かべて、せめてものなぐさめとしていたのでした。