この光栄ある詩人が、遽かに永劫の楽園を慕うて沈黙の海に消え、紫色の……さながら夢のような……さながら消えた悲みのような、遠いまた杳かな島山蔭の波間に見える、永劫の夏の浄土に憧がれ、漕いで行ってしまわれた夕暮、我れは悲しみにたえやらず、君の行方なつかしく、美しい茜色の西の大空を、野越え、山越え、森越えて眺めやり、松樹影暗く繁る、瘤寺の、湿れる墓畔に香を焼いて、縷々として寂寞の境に立ち上る、細い細い青烟の消えゆくを見るも傷ましく、幾たびも幾たびも空想を破る鐘の響に我れ知らぬ暗涙をたたえたことであった。
――思うともなく、その日のことが思いだされて、未だにその時の光景が瞭々と目に浮んで来て堪えられぬ。
この春のことであった。