古からあった一挺の三味線は、娘の子供の時分までは、よく母親の弾いた音を聞いたが、或年の梅雨の頃、その三味線の胴皮が、ぼこぼこに弛んで音が出なくなってから何処へか隠されてしまった。
勿論、張り換るような処がこの近傍になかったからでもあろう。
それからというものは、家の内は常に寂然としていて笑い声すら洩れなかった。
古からあった一挺の三味線は、娘の子供の時分までは、よく母親の弾いた音を聞いたが、或年の梅雨の頃、その三味線の胴皮が、ぼこぼこに弛んで音が出なくなってから何処へか隠されてしまった。
勿論、張り換るような処がこの近傍になかったからでもあろう。
それからというものは、家の内は常に寂然としていて笑い声すら洩れなかった。