ああ、彼が故郷を思い出すのは、僅かにこの一瞬時あるばかりであった。
翁は、机の上の書物を伏せて、手を合せて指を組んで、頭の上に当て俯向して、神に何をか祈る……翁が初めの五年、六年は斯様風のものであった。
それが或年から、全く翁の身形や、信仰が変ってしまった。
ああ、彼が故郷を思い出すのは、僅かにこの一瞬時あるばかりであった。
翁は、机の上の書物を伏せて、手を合せて指を組んで、頭の上に当て俯向して、神に何をか祈る……翁が初めの五年、六年は斯様風のものであった。
それが或年から、全く翁の身形や、信仰が変ってしまった。