紅、青、紫色の燈火が星のように輝やいて、行手の道の両側には見物店や、食物店が、それはそれはちょうど九段の招魂社の祭りに行ったように奇麗に居並んでいて、其処を往来するお姫様や、小供の姿が手に取るように見えます。
しかし余程隔っていると見えて物音は何も聞えず、ただ立派な着物の縞や、人の顔などが朧ろに見えるばかりで、眠むそうな太鼓の音が時々、どんどんと聞えるばかりであります。
二郎はこれが母さんのいなさる処かと心のうちで思い込んで、早く行ってその祭を見たいと駆け寄りますと、ちらりとお母さんの笑顔が幻しに見えたかと思うとぱっとしてその影は何処へか消えてしまいました。