人も稀にしか行かない処で、春、夏、秋、冬、鳥の啼声と、白雲の悠々と流れ行く姿を見るばかり。
偶々道に迷うて、旅人のこの辺まで踏み込んで、この物怖しの池の畔に来て見ると、こは不思議なことに年若い女が悄然と佇んで、自分の姿をその白銀のような水面に映してさめざめと泣いているのを見る。
旅人は斯様な山中にどうして斯様女がいるかと怪しみながら傍へ行こうとすると蔦葛や、茨に衣のからまって、容易に行くことが出来ず、声を上げて女を呼ぶとその声音が不思議に妙な反響を木精にたてて、静かな死せるような水面がゆらゆらと揺ぐ。