彼は深川佐賀町の寓居で、房楊枝をくわえながら、錆竹の濡れ縁に萬年青の鉢を眺めて居ると、庭の裏木戸を訪うけはいがして、袖垣のかげから、ついぞ見馴れぬ小娘が這入って来た。
それは清吉が馴染の辰巳の藝妓から寄こされた使の者であった。
「姐さんから此の羽織を親方へお手渡しゝて、何か裏地へ絵模様を畫いて下さるようにお頼み申せって………」
彼は深川佐賀町の寓居で、房楊枝をくわえながら、錆竹の濡れ縁に萬年青の鉢を眺めて居ると、庭の裏木戸を訪うけはいがして、袖垣のかげから、ついぞ見馴れぬ小娘が這入って来た。
それは清吉が馴染の辰巳の藝妓から寄こされた使の者であった。
「姐さんから此の羽織を親方へお手渡しゝて、何か裏地へ絵模様を畫いて下さるようにお頼み申せって………」