そしてそう云う書画、それ自身としては格別のものでもない軸物の何処が調和するのかと云えば、それは常にその地紙や、墨色や、裱具の裂が持っている古色にあるのだ。
その古色がその床の間や座敷の暗さと適宜な釣り合いを保つのだ。
われ/\はよく京都や奈良の名刹を訪ねて、その寺の宝物と云われる軸物が、奥深い大書院の床の間にかゝっているのを見せられるが、そう云う床の間は大概昼も薄暗いので、図柄などは見分けられない、たゞ案内人の説明を聞きながら消えかゝった墨色のあとを辿って多分立派な絵なのであろうと想像するばかりであるが、しかしそのぼやけた古画と暗い床の間との取り合わせが如何にもしっくりしていて、図柄の不鮮明などは聊かも問題でないばかりか、却ってこのくらいな不鮮明さがちょうど適しているようにさえ感じる。