歌舞伎の方でも時代物や所作事の衣裳の華美なことは能楽のそれに劣らないし、性的魅力の点にかけてはこの方が遙かに能楽以上とされているけれども、両方をたび/\見馴れて来ると、事実はそれの反対であることに気が付くであろう。
ちょっと見た時は歌舞伎の方がエロティックでもあり、綺麗でもあるのに論はないが、昔はとにかく、西洋流の照明を使うようになった今日の舞台では、あの派手な色彩がやゝともすると俗悪に陥り、見飽きがする。
衣裳もそうなら、化粧とてもそうであって、仮に美しいとしてからが、それが何処までも作った顔であってみれば、生地の美しさのような実感が伴わない。